こんにちは、海外起業家名鑑|Unicorns Mediaを運営してます、あきです。
海外企業の創業秘話ついて毎週取り上げるこのニュースレター。
今回は世界最大級の音楽ストリーミングサービスSpotifyを創業した「Daniel Ek(ダニエル・エク)」について掘り下げていきます!
16歳の時、Googleに応募して断られた少年が、後に音楽業界を救うビジネスを起こすとは誰が想像しただろうか?
ダニエルは学校の教師よりも多く稼ぎ、親に「大学に行かなくてもいい」と言われるほどの天才少年だった。
彼の言葉を借りれば——
"I realized that you can never legislate away from piracy. The only way to solve the problem was to create a service that was better than piracy."
「海賊行為は法律だけでは解決できない。問題を解決する唯一の方法は、海賊行為よりも優れたサービスを作ることだ」
このアイデアが、今や6億人以上が利用する世界最大の音楽ストリーミングサービスを生み出した。
ダニエルは1983年、スウェーデンのストックホルムで生まれ。普通の子供とは違い、13歳の頃からプログラミングに没頭し、ウェブサイト制作のビジネスを始めた。
地元企業のサイトを1つ100〜200ドルで作り、14歳になる頃には教師よりも多く稼ぐまでに成長。16歳の時にはすでに25人のチームを率いる。
その才能を買われGoogleに応募したが、大学の学位がないという理由で断られる。この挫折が彼の起業家精神に火をつけた。
その後、デジタル広告会社「Advertigo」を創業。この会社が後に運命の出会いをもたらすことになる。
2005年、ストックホルムでダニエルは後に共同創業者となるMartin Lorentzon(マーティン・ロレンツォン)と初めて出会う。
マーティンはすでに成功収めていたデジタルマーケティング会社「TradeDoubler」の共同創業者だった。二人は異なるスキルを持っていたが、すぐに意気投合。技術に精通したダニエルと、ビジネス戦略に長けたマーティン。この接妙な組み合わせが後に大きな成功に繋がることに。
2006年3月、TradeDoublerがダニエルの会社Advertigoを1000万スウェーデンクローナ(約1億円)で買収。この取引がさらに二人の関係を深め、次の扉を開ける事になる。
2000年代前半、音楽業界は前代未聞の危機に直面していた。Napsterのような違法音楽共有サービスが急増し、CDの売上は急落。
iTunesの登場で状況は少し改善したが、1曲2ドル(約200円)という価格設定は多くの消費者にとって依然として高かった。違法ダウンロードの方が早くて無料で魅力的。
音楽業界は訴訟や規制で海賊行為と戦っていたが、効果は何もないに等しい。このままでは音楽産業自体が崩壊する恐れがあった。
ダニエルのアパートで頻繁に集まるようになった二人は、プロジェクターで音楽を聴いていた。そのたびに思ったのは「欲しい音楽を合法的に見つけてダウンロードするのが、なぜこんなに難しいのか?」ということ。
そこでダニエルはこう考えた
「海賊行為は法律だけでは止められない。問題を解決する唯一の方法は、海賊行為よりも優れたサービスを作り、同時に音楽業界に利益を与えることだ。」
このアイデアが、Spotifyという革命的なサービスの基盤となった。
2006年、彼らはSpotify ABをスウェーデンで設立。ダニエルがCEO、マーティンが会長を務めた。
ちなみに、Spotifyという名前も興味深い由来がある。ブレインストーミング中にダニエルがマーティンが言ったことを「Spotify」と聞き間違え、それがそのまま名前に。後に「Spotlight(スポットライト)」と「Identify(識別する)」の組み合わせだと説明されるようになった。
Spotifyのプラットフォーム開発は比較的スムーズだったが、レコード会社との交渉は最大の難関だった。
音楽業界はNapsterの影響から立ち直れておらず、新しいデジタルプラットフォームに対して極めて消極的だった。彼らは、シリコンバレーの多くのスタートアップとは異なり、初期の段階で外部投資を求めず、自分たちの資金でビジネスを始める。
ダニエルのアプローチは独特。彼は音楽レーベルを「敵」としてではなく「パートナー」として位置づけ、協力的な姿勢が、最終的にレコード会社との取引を可能にした。
スウェーデンでの契約を確保するのに2年かかり、アメリカ市場への進出にはさらに2年を要した。
2008年10月、Spotifyは英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンを含む限られたヨーロッパ市場で正式にサービスを開始。そのビジネスモデルは音楽業界にとって革命的だった。
彼らは「フリーミアム」モデルを導入。無料の広告サポート版と、月額約10ドル(約1000円)のプレミアム版の二層構造だ。
無料サービスはユーザー獲得と市場浸透のためのものであり、プレミアム版は広告なしの体験と追加機能を提供する収益源だった。
この戦略は、エクの「人々の行動を変える」という哲学に基づいき、「人々は、より良い体験と合理的な価格設定があれば、喜んでお金を払う」という信念だ。
ヨーロッパでは大成功だったにもかかわらず、アメリカ市場への進出は容易ではなかった。アメリカのレコード会社はさらに保守的で、契約交渉は至難の業。
2011年、Spotifyはついにアメリカでサービスを開始。しかし、その時点でAppleのiTunesはすでに市場を支配していた。当時、多くの業界専門家は「Spotifyはアメリカで成功できない」と予測。しかし、彼らは諦めなかった。
成長するにつれ、Spotifyは競合他社との戦いに直面した。2015年にはAppleがApple Musicでストリーミング市場に参入。
AppleはDrake、Taylor Swiftなどの人気アーティストと独占契約を結び、Spotifyに圧力をかけた。また、Amazon、Google、SoundCloudなども競合として市場に参入。
驚くべきことに、Spotifyは大手テック企業との競争の中でも市場シェアを維持を継続。彼らの成功の秘訣は、音楽だけに焦点を当てた専門性と、継続的なユーザー体験の改善だった。
ダニエルのリーダーシップの下、Spotifyは音楽ストリーミングだけでなく、ポッドキャストやオーディオブックなど、コンテンツの多様化を進めた。
この拡大は戦略的なものだった。AppleやAmazonが巨大なリソースで音楽ストリーミング市場に攻勢をかける中、SpotifyはAudible(Amazon)やApple Podcastsなどの他のオーディオプラットフォームに対抗する必要があったからだ。
2018年、Spotifyはニューヨーク証券取引所に直接上場。伝統的なIPOではなく、直接上場という革新的な方法を選択したことも、彼らの独自性を示している。
2025年現在の、Spotifyの時価総額は1,200億ドル(約18兆円)に達した。これは、2010年にエクが「Spotifyは数百億ドルの価値がある会社になる」と予測したことが的中したことを意味する。
CEOとして、エクは「Spotifyの株式を売却することに興味はない」と明言している。彼はグローバル企業になった今でも、長期的なビジョンを持ち続けている。
現在、Spotifyは6.75億人以上のアクティブユーザーを持つ世界最大の音楽ストリーミングプラットフォームまで成長。これは音楽ストリーミング市場全体の31.7%を支配する圧倒的なシェア率を表している。3,000万曲以上の膨大な音楽ライブラリに加え、500万以上のポッドキャストを展開。
音楽業界も大きく変わった。かつては海賊行為で壊滅的な打撃を受けていた業界が、ストリーミングサービスの台頭で回復。Spotifyはその中心的な役割を果たしている。
マーティンは2016年に会長を辞任したが、ダニエルはCEOとして引き続き会社を率いている。
彼らが小さなスウェーデンのスタートアップから始めたプロジェクトは、音楽の聴き方を根本から変え、音楽業界の経済モデルを再構築した。
今回は以上です。
Spotifyの創業秘話いかがだったでしょうか?
彼らの成功は、問題を異なる角度から見る「洞察力」と、業界の流れに逆らう「勇気」にあると思います。単なる技術的な解決策ではなく、音楽業界全体の経済モデルを再考することができたのもこれらがあったからこそ。
「海賊行為より優れたサービスを作る」という単純だが斬新なアイデアが、世界を変えました。あなたの身の回りでも、同じように「当たり前」を疑い、もっと良い解決策を生み出せる機会があるかもしれません。
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