こんにちは、海外起業家名鑑|Unicorns Mediaを運営してます、あきです。
海外企業の創業秘話ついて毎週取り上げるこのニュースレター。
今回はNotionの「Ivan Zhao(アイバン ザオ)」について掘り下げていきます!
今では聞いたことがない人がいないくらい有名になった多機能ワークスペースツール「Notion」。メモ作成やタスク管理、プロジェクト計画、データベース作成、Webサイト制作などその機能は数えきれない。
その自由度から、Notionのテンプレートを作成し、それを収入源とする人々が次々と現れた。日本の大企業トヨタもNotionを会社で導入し、現在のユーザー数は1億人以上を突破。
これだけ有名になったNotionだが、その成功の裏側には
日本の京都から受けたインスピレーションや
数々の困難や挫折
計画的なマーケティング戦略があった。
アイバンは中国北西部にある新疆自治区という小さな街で生まれ。幼い頃から、プログラミングやパソコンを触ることが好きで、特にレゴで遊ぶことに夢中だった。中学校に進学するため、首都北京に引っ越す。
北京の中学に入学するには何かしらの賞を取る必要があったため、国際情報オリンピックに出場し、北京で2位の成績を収める。
その後、母が一人っ子だったアイバンに「より良い教育を受けて欲しい」と願い16歳の時にカナダへ移住。しかし、まったく英語が話せなかった。そこで、スポンジボブを見て英語のニュアンスやジョークを学んだという。
すでにプログラミングの知識には自信があったため、バンクーバーのUniversity of British Columbiaに入学し、Fine ArtsとCognitive Scienceを専攻した。
大学時代の友達はアーティストばかりで、プログラミングのプの字もわからない人達。唯一知っているのは彼だけ。そういう人のために4、5つのポートフォリオを載せれるウェブサイトを作ったという。
そこで「もしデザインのセンスがあって、プログラミングが出来ればすごいウェブサイトを作れるのでは」と考え、2013年に最初のアイデアが生まれた。
彼が作りたかったのは自分が作りたい作品を自由に作れ、人間のクリエイティブさを最大限出し切れる子供の頃に夢中になったレゴのようなサービス。
1年間、Inkling(ebookのスタートアップ)で仕事をしながら初期のプロトタイプ「NotionBeta」の開発に取り組んだ。
そのアイデアに1番共感し、Notionの成長に大きな影響を与える2人がいる。
Akshay Kothari(アクシェイ・コターリ)
大学卒業後すぐのアイバンがサンフランシスコで仕事を探すために、Hacker Newsに投稿したブログがきっかけで、PulseというニュースアプリをLinkdeInに9,000万ドルで売却したアクシェイと出会う。
アイバンが作ったアプリの美しく、綺麗なデザインに感動し、自分の会社で働かないかと誘う。当時、すでにInklingで働くことを決めていたアイバンは断ったものの、時折連絡をする仲に。
アクシェイは後に、Notion Betaに初期投資をし、NotionのCOO(最高執行責任者)として会社を支えることになる。
Simon Last(サイモン・ラスト)
NotionBetaの開発状況をTwitter(当時のX)でツイートしていた際、1人の少年のポートフォリオに目が入った。それが共同創業者のサイモンだった。
彼は当時まだ大学生だったが、アイバンのNotionに対するビジョンに感激し、大学を中退して、共同創業者になることを決意。
初期のNotionは今とは全く違う。ノーコードでWebサイト構築が出来るサービスからアプリ制作のサービスへと進化していった。
友達や家族、アクシェイから200万ドルの投資を受け、3年間かけてNotion Betaを普及することに注力。
しかし、ユーザーからの評価は酷評だった。
「これはプロダクトではない。」
「全く理解できない。」
当時使用していた、GoogleのWebフレームワーク『Web Component』がリリース直後だったこともあり様々な箇所からバグがあった。その量は莫大で、ユーザーからのミスなのか、サーバーからのミスなのかもわからない始末。挙げ句の果てには、ユーザーが作成したコンテンツも飛んでしまっていた。
そこで違うWebフレームワーク『React』を使って1から作り直そうとするが、その時にはすでに資金が底を尽きかけていた。創業者のアイバンとサイモンも含めた5人の従業員は全員疲れ切ってしまう。
3年間の努力を投げ捨て、Simon以外の3人を解雇する大胆な行動に出る。
2016年、カリフォルニアを拠点に活動していたが環境を変えるために数ヶ月間日本へ移住。その間、カリフォルニアで借りていたアパートやオフィスは賃貸で貸していた。そのお金で日本での生活は可能だったと語る。
また、会社を建て直すためにアイバンの母から150,000ドルのお金を借りて事業を再建する事を決意。
京都での生活は「人生で1番楽しい時間だった」とアイバンは語る。京都の伝統的な建築物、レストランのおもてなし、温泉で受けたホスピティタリティなどがNotionのユーザーへのアプローチ、デザインに染み付いている。
毎日必要最低限しないといけないこと以外は18時間以上コードを書く日々を過ごし、そこで出来上がったのは、現在のNotionに近い、ドキュメントが作成でき、Wikiのようなものが作れるNotion1.0。
プロトタイプは出来上がったが、ユーザーがお金を払って使うものではないと気づく。そこで、ユーザー獲得のために大胆な作戦を取った。
サービスのローンチから、スタートアップやエンジニアの間で徐々に人気が出てきたNotion。無料プランが充実していて、コードを書かずに自由にカスタマイズ出来ることからコアなユーザー層が、SNSでNotionを紹介、テンプレートを作成・販売したりする事で自然に広がった。
それだけではなく、その知名度を押し上げた数々のエピソードが存在する。
まず、サービスの知名度をもっと上げるためにProduct Huntというサイトで1位になることを目指した。そのため初期の投資家であり、世界有数のエンジェル投資家であるNaval Ravikantにも助けを頼んだ。
ちなみに彼は、Xで270万人のフォロワーがいる。
そこから注目を浴びて、Y CombinatorやSequoia Captialなど有名なベンチャーキャピタルから目をつけられ記事で取り上げられることも多くなった。
次に、アイバン自身がRedditやXでユーザーと直接コミュニケーションを取った。そうすることによって消費者とのコミュニティーを作ることができ、直接フィードバックをもらうことが可能だった。
このような地道な努力で、コアなファンとのコミュニティを形成。結果として、韓国や中東でのユーザー獲得につながった。当初、ガイドラインは英語のみだったが、ヘビーユーザーが自発的に翻訳。これにより、十数万人規模のコミュニティが生まれた。彼らには、新機能の先行体験やNotionのコアメンバーとのFaceTimeの機会を提供。また、欲しい機能の提案も受け付けた。広告に頼らず、コアなファンを育てることで成長を実現した。
これらの戦略でコロナ禍までに、40人の従業員、100万人ユーザーを獲得し5,000万ドルの資金を調達。しかし、Notionの成長は止まらなかった。
2020年、コロナ禍でリモートワークを強いられる状況が続く中、Notionのユーザー数はさらに増加。また、大学などでもオンライン授業が主流になりZ世代がNotionを使い始める。TikTokでのNotionを使った趣味を副業に変える仕方や学校の課題に取り組む方法についての動画が大バズりした。
この急激な成長でデータベースストレージがなくなってしまい、6ヶ月間新しい機能などを追加せずに、インフラの管理やデータベースを複数作ることに注力した。
2025年現在、Notionは単なるノートアプリではなく、企業や個人の生産性を大幅に向上させるオールインワンツールとして進化し続けている。
特に近年、AI機能の強化が大きな話題となっており、Notion AIを活用することで、ユーザーは自動要約、文章生成、データ整理などをスムーズに行えるようになった。また、GoogleカレンダーやSlackとの連携強化など、チームでの仕事や課題をさらにスムーズにする機能も次々と追加されている。
加えて、テンプレートエコノミーの拡大も注目されるポイントだ。個人がNotionのテンプレートを販売する市場が成長し、人気のテンプレートクリエイターは数百万単位の売上を上げるケースも出てきている。
企業ユーザーの拡大も著しく、トヨタやShopify、Pixarなど、世界的な企業もNotionを業務に活用。特にエンジニアやスタートアップだけでなく、マーケティングや教育機関にも浸透し、全世界で1億人以上のユーザーを抱えるまでに成長した。
アイバンがかつて夢見た「レゴのように自由に組み立てられるツール」は、今まさに、世界中のクリエイターや企業の手によって形を変えながら進化し続けている。
今回は以上です。
Notionの創業秘話いかがだったでしょうか?
アイバンはNotionの成功を『ユーザーとの密接な関係』と『プロダクトへのこだわり』で築いたと思っています。彼の姿勢から、企業の成長において最も大切なのは“広告だけではなく、コアなファンとの関係”であると。
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